これまで読んできた小説の中で最も異質で、そして最高の一冊だった
最高という表現が酷く陳腐で、この感動をうまく言葉に紡げないのが悔やまれるほどにどのシーンを切り取っても美しく惹きつけて止まない文章だった
この小説を知ったのは同名の「SHANTARAM」というルートがノルウェーにあることを知ったのがキッカケだった
初登したのはベルント・ツァンガール。世界中を旅して数多くのハイボールや高難度ラインを初登してきたプロクライマー。尊敬し、そして憧れるクライマーの1人。
当時、その彼をして最高傑作と言われたラインが「SHANTARAM」。ベルントツァンガールによるグレーディングはされなかったが、再登者よりV14/8B+となっている。
場所はノルウェー。フィヨルドの中に浮かぶ無人島に鎮座する巨大なボルダー。いつかはトライしたいと思いアプローチの仕方を調べたが、船を使って行かなくてはならず、1日7000円くらいかかるらしい。
しかもルーフなのでマットをどう運ぶのかも悩ましい。ソロで向かうには費用がかかり過ぎるので一度は断念したが、最近はエアーで膨らませるクラッシュパッドも開発されたので、少し希望が見えてきた。
さらにはブラジルで知り合ったエリックというアメリカ人クライマーもシャンタラムをトライしたいと言うので、少しづつではあるがトライの現実味が帯びてきた。
そんな「SHANTARAM」だが、どういった意味なのかと調べたところ、この小説のタイトルであることを知った
簡単なあらすじを言うと、メインとなる舞台はインドのムンバイ。主人公はオーストラリアで刑務所に入っていたが脱獄し、インドへと逃亡し、この地で新たな人生をスタートさせる。
インドのスラムに住んだり、マフィアの一員になったり、薬物中毒になったり、アフガニスタンへ向かう軍の遠征に参加したりするのだが、、、
この小説がとにかく凄いのは、フィクションでありながらも「ほぼ実話」と言われているところ
主人公の「リン・シャンタラム」は作者である「グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ」の経歴をなぞるかのようにインドの暮らしに溶け込み、時にはその闇に沈み、ムンバイが抱える多種多様な人生に触れながら生き抜いていく。
「シャンタラム」というのは、インドの村で主人公がもらった名前であり、「平和の人」を意味する。主人公は名前とは程遠い過酷な人生を生きることになるが、そこから感じ取ること、見出すことの全てが自分の心を打った。
いつかは読みたいと考えていたが、ダラダラと時間が経ってしまった。それでも、この小説を読むなら今このタイミングしかなかったような気もする。
ちなみにこの作者のグレゴリー・デイヴィッド・ロバーツは、アローン・オン・ザ・ウォールの執筆にも携わっている。
まさかこんなところでもクライミングと結びつくとは
さらに余談だが、ベルント・ツァンガールは今インドでRakChham新しいエリアを開拓している。ヒマラヤの山嶺を望むことができるエリアらしい。
ここもいつかは行かねば
参考
グレゴリー・デイヴィット・ロバーツ(wiki)
この人の経歴は是非読んでみてほしい。こんな人生が現実にあるのか。存命。
Shantaram V14/8B+

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