葱「マット積んであるんだよね?」
J「積んでるよ?」
満腹の余韻に浸りながら弱々しくなった焚き火の灯りをぼんやりと眺めていると、葱は突拍子もなく聞いてきた。程よくアルコールの回った頭ではその質問の意図がすぐには分からず、疑問形で返してしまう。
葱「朝練しようかな」
J「は?」
葱は一体何を言っているのか。寒さと疲労とアルコールでついに正常な判断ができなくなったのだろうか。日中半袖でクライミングをしていたFukuザワさんまで隣でキョトンとしている。
確かに葱には次のような特徴がある。
1. 寒さに強く氷点下でも耐えられる
2. 暑さにも強いため、岩質を選べば年間通して登攀が可能
3. 連登障害が出にくいため、同じ場所での連登が可能
名は体を表すとはこのことか。”湿気は苦手”という性質まで似ている
#参考記事
しかし横ではZoeポンが「最高っすねぇ」とクチビルをブルブル震わせながら呟いている。Fukuザワさんのご飯も山の空気も登攀後のお酒も最高だが、そのくちびるの振動は明らかに最高ではない。唯一、気温が足りていない。
しかし、メンバーにそれだけのやる気があるのならば便乗しない手はない。自分1人ではとてもやる気にならないことでも、誰かとなら出来てしまったりする。セッション効果とは誰かが岩場に行こうと思ったときから発生しているらしい。
AM5:40
ジェイフォンからアラームが鳴り響く。寝袋にくるまり棒のような姿勢で目を閉じたまま目覚めると、意識だけは冴えているのに身体は微動だにできない。蒼天攀路の反動が全身に効いている。どうにかして目を開くと、外が微かに明るくなっていることだけは分かった。
鳴らなくていいのに、、、そう思いながら身を起こす。冷え切った体からシュラフを剥がしたあとは、背中に氷でも落とされたかのように身震いした。
テントから出るとキャンプ場はまだ静かで、針を刺すような冷たさだけが満ちている。昨夜使った皿には氷が張っていた。各々のテントを揺らすと
「んあぁぁ、、、行くかぁ~~」
と、寝起きらしい返事がした。Zoeポンからは「ボクは寝てます~」という返事があり、そのまま彼のテントは静かになった。
Fukuザワさんと葱が来るまでにクラッシュパッドを車からおろし、その上に座って2人を待つ。おろしたてのスタンスビレイパーカー(Black Diamond社製)のファスナーを1番上まで閉め、ヘルメット越しにでも被れる大きめのフードを被った。化繊を使用しているこのジャケットは同クラスのダウンパーカーに比べれば幾分重いが、今はその重さが心地良い。
このパーカーの可能性は無限大だ。内側にはクライミングシューズを入れておける大きなポケットがある。氷点下のクライミングが待っていようと、ここにシューズを入れてさえおけば、体温でほぐれたシューズを履いてトライすることができる。安土桃山時代にこれがあれば秀吉も愛用していたに違いない。
もちろんシューズにこだわる必要はない。マグマカイロを入れておけば、着るコタツの完成だ。両開きのファスナーを調整すれば、ビレイしている時だって邪魔にならない。コタツにくるまったままの夢のビレイが出来る。
それでもまだ口周りの隙間から忍び込もうとする冷気が漂っている。
それに対して俺は首に巻いていた肌触り抜群のメリノ250リバーシブルパターンネックゲイター(smart wool)を鼻が隠れるまで持ち上げた。ウール100%素材のネックウォーマーの肌触りの良さはもはや言及の余地もなく、昨夜は首につけたまま寝ていたことも忘れていた程だ。これで俺は無敵だ。いつまでだって待てる。トネギのことも、Fukuザワさんのことも、、、、もちろんシバフノのことだって。
深く息を吐いて、体温と同じ暖かさの空気を口周りに対流させる。厚手のジャケットとウールの心地良さに包まれた俺は、まだ重たい目蓋をすうっとおろし、このステマブログの書き出しを考えながら2人の準備が整うのを待った。
11/1 (日)
AM6:30 不可能スラブに到着
岩冷たっっっ!!!
ラジオ体操をやりながらゆっくり体を起こし、静かの海、豊かの海、伴奏者をトライ。
何も登れず。
あいも変わらずスラブはシーズンを跨ぐと色々忘れている。伴奏者のムーヴを思い出せたのはいいが、次来るのはいつになるやら。
7:30頃に別パーティーが来たのを見て、我々3人は「意識高すぎじゃない?」「凄すぎる!」と話し合っていた。自分たちのことはもはや見えていなかった。
キャンプ場に戻って朝食。Fukuザワさんのフレンチトーストに我々全員の胃袋は鷲掴みにされた
ダラダラしてからマラ岩へ
イレギュラー 10dをヌン掛け
レギュラー10cでZoeポンのリードデビューをお手伝い。三段クライマーが4ピン目くらいで果ててた。
ブラックホール12bを久しぶりにトライ。バーニスより全然保持感悪い。
そしてカサブランカ(10a)をOSトライ
丁度いいサイズのクラックが続いて気持ちいい。無事OS。
最後にZoeポンのJECC(5.10d)トライのためにヌンガケ。さらにZoeポン敗退後に回収トライでもう一便出す。
同じように登っても勿体ないので、一度はやってみたかったシャルルスタイルでトライする
昔ロックランズにあるヨセミテスラブ(V8, 7b)をシャルルとセッションし、裸足のシャルルだけが完登するという衝撃を受けてから、チョコチョコ裸足クライミングもやっていた
裸足で登るメリットは
・足の指のトレーニングになる
・ソールが減らない
・靴を持ってくるのを忘れても「スタイルなんで」と言って誤魔化せる
といったものがあると思う。知らんけど。
しかし人が裸足で踏んだホールドを後から触るのは嫌な人も多いというデメリットがある。
てなわけで陽が暮れて誰もいなくなった後の回収便という状況こそ、このトライをするチャンス
11aと10dとの分岐点まで粘ったものの、そこで足がぬめって落ちた。よく考えたらシャルルもリードはしてないわ。
ワンテンしてからは普通に靴を履いてトップアウト。またいつかリベンジしてみたい。
お決まりのレストラン141で〆て帰宅
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