8/10 (日)小川山
With ティルナツ
「8時には満車ですよ」
というクラスター必死の不安な情報をもとに、予定より1時間半出発を早めて小川山を目指す
談合坂手前で微妙に混んでる。
談合坂でナッチャンに運転を代わってもらい、助手席で二度寝
9:00着、満車(第二駐車場含む)
夢の国にでも来たのだろうか?
新しいトポの公開は新アトラクションお披露目の如く、日本中の花崗岩ファンを呼び寄せているらしい
伴奏者やる予定だったけど、諦めて瑞牆へ移動
こちらは何とか車を停めれるものの、同様に混んでる。やはりみんな自然を欲してるんやな。
とりあえず皇帝岩で遊ぶ
高きミクラの横のラインこんな楽しかったっけ?ってくらい岩登り楽しい
そして完登後の三度寝
気持ち良すぎ
起きてからヴォック初段を気合で再登する
スラブモードに入ってたので、十五夜へ移動
とりあえず十六夜の再登を試みる
が、出来ん。何度やっても出来ん。一度だけポケットを掠めたので、どうやら不可能ではない。けれどこれホンマに登れたんか??夢を見ていただけなのだろうか。魔法にかけられてたのだろうか。
あまりに暑すぎるので一旦移動。ナーガ1級で遊ぶ。クラックムーヴの楽しい課題やった。
そして夕暮れにもう一度だけ十六夜やるも、やはり登れん。結局十五夜も八十八夜もトライせず終了。ここもまた、永遠に完登しない場所なのか。♯1
垂壁&スラブ能力が低い。何も成長していない。先が思いやられる。何はともあれ一面緑色の山の中でのクライミングは気持ち良かった。もうそれだけでいい。
帰りの運転もナッチャンに任せて境川PAまで四度寝
久しぶりの境川で何を頼むか迷い、ナンバーワンとだけ書かれたプレートを見てモツ定食を頼む。美味しい。が、しかし、どこか淡白である。七味をかけてもそこまでご飯が進む感じではない。主菜のポジションを担うには塩気がたりていない。ナンバーワンとだけ書かれたプレートを見て浅慮な選択をしてしまった。濃い味を欲していた。これが評価社会の弊害か。周りの評価に惑わされず真実を見抜かなくてはならない。そしてふと気づく。この感覚前にもあったな、と。
記憶の引き出しから微かに音が鳴った気がした。そして京大ウォールの旧友「IJ」を思い出した。懐かしい存在だ。彼についてはブログの一記事では簡単には語り尽くせない。その個性・エピソード、語ろうと思えば枚挙にいとまがない。ただ一つ言えるのは、IJとは「一生・実家」の略であるということ。
そんな彼との淡い大学生活の思い出の一つ。それは550円で1500kcalくらい取れそうな定食を提供してくれる、京大ウォーラーゆかりの定食屋「丸二食堂」でのことだった。
ここの丸二定食という名の日替わり定食にはいろんなパターンがある。変わらないのは並盛りのはずなのにこんもりよそわれた白ごはんと家庭的な味わいのお味噌汁。糖質オフという言葉が流行る前の時代の定食。まぁ、畳に地べたにフスマに障子、そしてシュート全巻揃った本棚という実家セットの中で食べる定食のご飯に、流行りのダイエットなど関係ないのだが。
そんな丸二定食で一度「おでん」に遭遇したことがある。冬の間はよく出てくるようだ。IJと2人で食べに行ったときだ。
おでんは好きだが、ご飯は進まない。浜松おでんならば進む。濃い味噌だれはご飯によく合う。しかし出てきたのは透き通った黄金色の出汁に浸かった定番のおでんだ。せめて牛すじが含まれていたなら、その肉汁を推進力に限界まで米を流し込んだだろう。残念ながら牛すじはなかった。もっとも推進力があるのは茹で卵だ。ただでさえ多い白飯が、切り崩すことの出来ない岩山に見えてきた。
J「おでんって、ご飯進まなくね?」
IJ「そう?普通に食えるけどな。何で食えへんの?」
J「なんかやっぱり肉と一緒に食いたいってのがあるからかな。」
IJ「でも漬物とか野菜やん?漬物でもご飯食えるんやろ」
J「まぁな。」
IJ「てかチクワとかも元々魚肉やん」
J「確かに。」
鮮やかに論破された。だけど不思議と悪い気がしない。それは相手がIJだからだ。彼はいつも純粋な好奇心にのみ基づいて質問を投げかけてくる。相手を論破しようなどという気持ちはない。その証拠に彼から「それはおかしい」という発言を聞いたことがない。明るい声で「なんでなん?」と聞いてくる。「なるほどなー」という言葉で会話を締める。
そして人は彼と会話することで自分の過ちに気付かされる。それは誰かに指摘されるのではなく、自己の内面に隠れた真実や辻褄の合わない綻びにその目が向くように、極自然に誘導された結果としてそうなる。
自分はおでんでご飯は進まないと思い込んでただけではないのか。揚げ豆腐とガンモとゴボウ巻きの区別も着かなかった幼少期の第一印象を引き摺っているだけじゃないのか。今ならおでんと共にご飯が進むかもしれない。そんな気にさせてくれた。
しかしここにも落とし穴があった。
IJとの会話で気づけたのは「おでんでご飯が進まない理由」、その論理が破綻しているということだけだ。固定観念が崩れただけではおでんの味は濃くならない。やはりご飯は進まなかった。
SNSで自己表現を気軽に行える時代になったが、その反面他人を覗くことも簡単になった。顔の見えない多くの人が隙を突こうと伺っている。
伊坂作品の一節に「議論で相手を言い負かして幸せになるのは、自分だけだって気づいてないんだよ。」というのがある♯2。マウントをとっても幸せになるのはマウントを取った人だけだ。おでんでご飯は進まない。
境川を出ると上野原周辺はひどく渋滞していた。いつか瑞牆に通い詰めていた時に見た景色だ。何度か車が完全に停止することもあった。
おでんをおかずにした時のご飯くらい進まないな。
そんなことを思いながら五度寝した。
参考
♯1
ウォルトディズニー「ディズニーランドは永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り、成長し続ける。」
♯2
『魔王』伊坂幸太郎
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