3/19(水)
9:30起床
お土産を買いに行く。5,000$チップと$10,000チップのチョコレートを買う。前澤社長も顔負けのお金配りおじさんになる準備を済ませ14:30頃にスリープウォーカーへ
カイ・ウェイリーに会う
今日は不調らしい。昨日スノーボードをやり過ぎたとのこと。
雑談していると彼は現在18歳とのことで、あまりに若く驚いたがクライミングは2歳からやっているとのこと。クライミング歴で言えば同期やった。そんなことある?
スリープウォーカーの方は、各ムーヴをチェックするとどのムーヴもいい感じ
繋げ2トライ目でスローパーが止まる。
スロットカチ取りで落ちる。スローパーを止めた後に人差し指の位置が若干ズレていることに気づく
そして何故かめっちゃ前腕が張っている
この日に賭け過ぎて緊張しているせいか、クライミング頻度が少ないのに高負荷のムーヴを続けていたせいか、月曜日にクレープ食い過ぎて風邪っぽくなったせいか、、、理由は分からないがやたら前腕が張っている
30分以上レストしてみたがあまりいい感じではない。それどころか前腕の痛みが増している。長期レスト明けでクライミングジムに行って筋肉痛になったときの感じに似ている
とはいえやるしかないので、やるしかない
気温は5℃台まで下がる。
湿度は30%
乾燥しすぎ
17時ごろ、ニューヨークからやってきた集団と会う。その中でも陽気な父親と爽やかな息子コンビがいて、息子のルーカスがウェットドリームをトライし出す。
彼らとおしゃべりして、少し気分も持ち直してきたところで再トライ
途中スローパーが止まりそうなトライもあったが結局止まらず
何だかんだで1日1回しかスローパーは止まらない。単発なら問題ないのに。
ウォルマートで最後の買い出しをして帰宅
余った大量のパスタを食べる
3/20(木)
10:00起床。
1日使えるのはこの日がラスト。金曜の昼には出発しなくてはならない
色々と悩んだが、ここまで来たら今ツアーはスリープウォーカーに全て捧げようと決めた
というわけで、この日は仕事は休みだが金曜の朝に全てを賭けることにし、自分はレスト
行きしなでスターバックス通称スタビーに寄る。日本でも寄らないからルールが分からん。なんでトールサイズが下から2番目なんや。
ブラックベルベットへ
ミシカを降ろす
ジェイは一旦トリエステ、シャオリンを見に行く。このオフロード往復するの精神的にシンドイ
快適なドライブを経てファーストクリークキャニオンへ。

結局ファーストクリークキャニオンには初めて来た訳だけど、景色が開けていて最高やった

ブラックベルベットみたいにオフロードを行かなくていいし。アプローチは平らなトレッキングコースを2kmくらい歩いてから、20分ほどの緩やかな登りをいく感じ。
とりあえず空荷で偵察する分には快適なアプローチやった
というか広大な砂漠に真っ直ぐトレイルが続いていて、その奥にあるファーストクリークキャニオンは眺めているだけでも潜り込んでみたくなる渓谷やった。

その先にあるネストV15も一度くらい見に行ってみていいかも。アプローチ75分って書いてあるけど。
そしてトリエステのボルダーの前も思ってたより景色が開けていて最高やった


当たり前のように残置マットと脚立がある
脚立に乗ってシャオリンのホールドチェック。最初のV13と言われるランジ先のホールドは思ったより良かったが、スロット気味になっていて正確に捉えるのが難しそう


何より飛び出す時のホールドがめっちゃ悪い。右手残すのシビアやな
2回目のランジ先はシンプルに遠そう。脚立では届かないので、取り先の持ち感は分からず
あと序盤のショルダームーヴがあんまり自信ない
正直、疲労を残すくらいなら見に来なくてもいいんじゃないかと思っていたけど、想像以上に快適なアプローチと素晴らしい景色に癒された
シャオリンもトリエステも眺めているだけでトライしたくなるボルダーやったし、景色も居心地も良いのが最高やった。本当に通いたくなるボルダーや。改めてまたレッドロックスに来たいと思ったし、もう一度来ると思ったら明日スリープウォーカー登れるかどうかは大した問題じゃないように思えてきて、なんだか気が楽になった。
次回来た時にアプローチを間違えないように写真を撮りながら、ノンビリとトレイルを戻る
アプローチの分岐点はここ

次の岩より手前だが、そこから曲がっても問題なし

トリエステはV字に赤くなっている谷間にある


ブラックベルベットに戻って、車の中で昼寝
暗くなった頃にミシカが戻ってきた。ウェットドリーム登れたらしい。やるやん!
帰りはマックで夕飯買って帰宅。
気合いの冷水シャワーを浴びてから就寝。
3/21(金)
7:20起床。
着替えてパッキングを開始する。
正直あんまり寝れていない
シリアルとスクランブルエッグを食べ切ってブラックベルベットへ
今回は時間節約のために自分たちのクラッシュパッドは持っていかず、全て残置マット頼み
10:00くらいにスリープウォーカー着。
最低でも14:00には出発することを考えると、ここにいれるのは13:30が限界
約3時間の勝負
過去イチ早く来たので岩にも陽が当たっている。この日は暖かくて気持ちのいい1日
ミシカはAbaddon V12をやるというので、1人スリープウォーカーに集中する。
核心が逆光になっているので、時間を潰すがてらアップも兼ねてふと思いついたピンチを試す
これまでのムーヴの場合、核心は中継ホールドを抑えてステップを運ぶことだった。右手の中継ホールドは体が振れるとすぐスリップしてしまう。ブレないために左手アンダーに力を入れる必要があるが、腰にも負担がかかるし、どのみち確実ではない。
そこで中継ホールドをピンチしてみると、問題なく足を運べることが分かった
しかし、ピンチから持ち替えるのがまたストレス
あちらを楽にすればこちらがしんどくなる。どの動きがベストか迷う
試しに1トライ。ピンチで動くと飛ばしの態勢までスムーズに行けたが、やはり持ち替えのタイミングで保持感が代わり、上手く体を引き上げられず、スローパーは止まらない。
しかし1回目でこの感じはいいようにも思う。時間さえあればじっくり比較出来るが、あと2時間もない。
するとシカゴからやってきたクライマー3人組に出会う。
遅れてカイ・ウェイリーも登場
11:30
ゆっくりとセッションが始まって来たところでジェイの2トライ目、ピンチをやめてみたが、やはり足運びが悪い。足を運んだ直後に右手がスリップ
カイと話していて、やはり右手はピンチで行くことにする
数分のレストを挟み3トライ目。ピンチ保持で足を運び、右手を持ち替える。いつもの飛ばしのポジションに入ることができ、思い切りスローパーを止めるとまさかの左手アンダーがすっぽ抜けた
焦らず5分ほどレストを挟んで4トライ目、足を運んだ後の持ち替えもいい感じ、確信を持ってスローパーを止めた
出来る限り右手を送り、次のムーヴを起こす。一つ目のアンダーに寄せてから右手を持ち直すが、中指・薬指共にいいところにかからず
やむを得ずそのままムーヴを起こすが、やはりアンダーカチに寄せた後に落ちてしまう
これはへこんだ
気付けば、最後のブラインドのガチャピンチは太陽の光を受けて輝いている
出来れば13:00には荷物を片付けはじめたい。あと1-2トライ出来るかどうか。
落ち着いて30分タイマーをセットしてレストする
12:20
5トライ目
中継ホールドの持ち感にも慣れ、スムーズに足を運び、スローパーを止める。右手を精一杯送って、人差し指にも確かにひっかかりを感じる
ここまでは4トライ目と同じ感覚。アンダーを寄せて右手をしゃくると、中指の第一関節がしっかりと立ち上がり、皺を保持れていることが分かる
薬指は浮いてしまっているが、もうこのまま行くしかない
落ち着いてアンダーカチに寄せ、全身全霊で右手をスロットカチに飛ばす。ほんの10cm程度の距離。人生で最も近く、最も力を込めた一手だった
スロットに指が食い込み、体はギリギリ耐えている。必死に持ち直そうとするが、全く調整が効かない。持ち直しは諦めて右手を全力で握り込む。
ハッキリ言ってこのとき、心の中では完登は諦めていた。それどころか、繋げてきて初めてスロットカチを取ることが出来て満足していたと思う。あとはとにかく出し切って終わろう、中途半端な落ち方だけはしない、そんな気持ちだった気がするが、今となっては自分でも分からない。とにかく無我夢中で、次のムーヴだけに集中していた。
左足のトウフックをかけて、左手を寄せる。右手が上手く持てていないからタメを作りにくい。単発なら問題ないはずのブラインドホールドが酷く遠く見えた。それでもギリギリ届くような気もした。
思い切って飛び出すと、丁度腕の伸び切ったところで左手が止まっていた。必死で持ち直し、足送りの態勢を作るが右手も左手も限界だった。
気合いで足を振り上げる。
左足のトウフックがリップに当たり、体が止まる。しかしいつものトウフックの効きじゃない。数瞬、フックを送り直すか迷うが、右手も左足も全てがギリギリの状態で浮いているので、体をこれ以上揺らすのは無理だと悟る。
ただひたすら、何かに祈りながら左手を伸ばした。フックが甘いせいで体が思うように伸びないが、ぼんやりと指先が掛かった。これ以上手を伸ばすのは無理だった。
その後にフックをずらしたのは無意識だった。トウかヒールかも考えていない。このまま右手を寄せても落ちるということだけ感じ取っていた。必死にフックをずらし、左に体が流れだしたところで右手をカチに寄せる。
まだ体は浮いていた。
左手をガバにずらして、ようやく深く呼吸することが出来た。何が起きているのか分からない。カイの「ワンモアムーヴ」の声が聞こえた。体のヨレが取れないまま、必死に左足を送り、最後のホールドに手を伸ばす。
マントルを返し切って、太陽に温められたスラブ面に体を預けた。
奇跡だった。勢いよく息を吸い込んで、乾き切った酸素をかき集めた。掠れた声で信じられないと呟いた。砂色に白飛びした視界に岩の模様が蘇ってきた。砂岩のきめ細かい粒を感じながら、長いスラブを登った。
岩の上からレッドロックスのパノラマを見納め、シカゴから来たクライマー、そしてカイと拳を合わせた。動画を受け取って見返した。確かに登っていた。
何もかもが信じられない出来事だった。
気持ちも落ち着いてきた頃、のこり30分の余裕があったのでSquoze V14もトライしてみた。が、体幹は終わっていた。ろくに踏ん張ることも出来なかった。
次回に取っておくことにして約束通り13:00に撤収開始、13:30には駐車場を出発した。
ラスベガスでガソリンを入れて、ロサンゼルスまで走らせる。ここから5時間、休憩一切なし、アメリカの広大な大地を駆け抜ける。
レンタカーは20:00返却予定だったが、途中道を間違えたり、ロサンゼルス市内で事故渋滞が発生していたりしていて、レンタカー屋に到着したのは19:58。
フライトは23:00だが、空港への移動にもやや時間がかかり、21:00過ぎにチェックイン。セキュリティも混んでいて、チケットには22:20搭乗と書かれているのにゲート前に到着したのは22:30。ベンチで一息つくことも出来ないまま機内へ乗り込んだ。
感慨に耽る間もなく、23:00のフライトでアメリカ大陸を離れた。
改めて、本当に最後のチャンスだったんだと思った。
スロットカチを取ったところからは本当に、夢遊病にでもなったかのように、ぼんやりとしたまま岩の上に立ち、そして降りて来た
なんで登れたのかも分からない、運が良かったとしか言いようがないツアーだったけど、居合わせたクライマー達がくれた動画を機内で何度も見直しては、本当に登ったんだと実感した。
ここ数年は、完登することよりも、とにかく1番挑戦したいものに挑戦して来たから成果なんてものは出なくていいとさえ思うようになっていた
ドリームキャッチャーもオリジンズも、国内で言えばアマテラスも、複数年単位で登って来たから、一回のツアーで決め切れたことが違和感でしかない
それでも、SNSを通じて沢山のコメントをもらうと、やっぱり完登ってのはいいもんだと思った
韓国での乗り換えも無事に済ませ、SNSの返信を返していたらすぐに次のフライトの時間が来た。一眠りしたらもう日本に着いていた。
本当にたくさんの方々に助けられて登れたラインでした。このブログを読んでいる方々、応援してくださった方々、サポートしていただいてる方々、ありがとうございました。
最後まで夢のようなツアーでした。
皆さんからのメッセージと、腰の痛みだけが現実だと教えてくれました。
レッドロックスにはまた行きます。もちろん次はリターン・オブ・ザ・スリープウォーカーで。

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