部屋で2人きりになったのは学生の時以来だ。何だか緊張する。卒業してからもう6年がたつ。社会人になってからも色んな経験をした。怖い思いだって何度もした。ちょっとやそっとのことでは動じない大人になったつもりだった。だけどやっぱり、この空気は苦手なままだ。
向こうもこっちを意識しているのが分かる。けれど中々距離は縮まらない。向こうから歩み寄ってくれることはない。分かってる。自分から行かなくちゃダメなことくらい。頭では分かっていても躊躇してしまう。
同じ空間にいるというだけでパニックになっているのに、もし触れてしまったらなんて考えると気が狂いそうだった。
この部屋で初めて目を合わせたときから、もうすぐ2時間が経とうとしている。いつまでもこのままではいられない。俺だって男だ。このまま何もせず朝を迎えるなんてしたくはない。少し大きめに息を吸い込んで、覚悟を決める。
意を決して、力強くテレビ台を引き寄せた。溜まった埃の中にその姿はない。消えた?一体どこに。途端に背後が気になりだした。天井、クローゼット、カーテンの裏、全てが疑わしく思えてくる。緊張が恐怖に変わる。眠れない夜が始まった。
#深夜にGが現れた
#しかも殺り損ねた
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