奈良の道の駅で目を覚ますと気温はガクッと下がっていて、瀬戸内の気候が早くも恋しくなった。
先に起きていた葱はコンビニで購入したカップ麺を啜っている。昨夜ラーメンを食べたのに今朝も麺か。そう呆れながらも、この寒さにカップ麺は悪くないとも思っていた。仕事後の一杯、風呂上がりのアイス、寒空のカップ麺。それは毎日でも繰り返されていい至福の時間だ。
コンビニの棚を一通り見て回るが、葱の美味しそうにカップ麺を啜る姿が脳裏から離れない。レジ横の惣菜コーナーを物色してみてもカップ麺を超える誘惑は見当たらない。本当はもうとっくに気付いていたんだ。自動ドアをくぐった時から、他に選択肢なんてなかった。昨夜ラーメンを食べたことなんて些事だ。12時間も前のことを引き摺るほど俺の口はヤワじゃない。
カップ麺を購入して熱々のお湯を注ぎ車に戻る。3分にはまだ早いが2分で十分。むしろ2分こそがベスト。新海誠から学んだ大切なこと。
いざカップ麺を食べようとしたとき、葱が口を開いた
「昨日も食べたのにまたラーメン?」
葱が啜っていたのはカップ味噌汁だった。
11/30(月)
ツアー最終日。名張へ。
実は初のトラッドクライミングはここ名張で。学生の頃に辺境クライマーけんじりとジャミング紳士ヤブくんに連れて行ってもらった。
懐かしい記憶。何を登ったかもよく覚えてない。
まずは気合の渡渉。
後半3mくらい足が痛過ぎて何が何だか分からんかった。渡り終えてから足を乾かしていると「あー、でもクセになるかも」と言ってのける葱さん。小川山の朝練といいマジで尊敬っす。順調に第一岩壁に到着。
一便目 直登(5.10a)
「上部で落ちるところが見たい」と言われたものの、右肘と引き換えにオンサイト出来た。
オフウィズはホンマに難しい。落ちるところを見せれんかったのは残念やけど、何はともあれ登れてホッとした。
しかし右手でアームバーを決めながら登ったせいで左手でしかプロテクションを取れなかった。それなのに#5は右側に引っ掛けており、俺の可動域ではカムをハーネスから外すことも出来なかった。これは今後もオフウィズをやる上で要確認ポイントになる。もし#4を左側に付けてなかったら詰んでいた。
2便目 ゴールドフィンガー 5.10b
快適なサイズから中間部でいやらしいサイズに代わり、時間をかけながらもどうにかオンサイト
2ピッチ分登ると名張の綺麗な渓谷がよく見えた。とても心落ちつく風景。瑞牆のような遠くまで開けた景色もいいけど、深い渓谷の静謐な雰囲気もまた良い。
一旦降りて、次にスネークマンをやろうかと話すも先客パーティーがいるのでターゲットを変える。
目を付けたのはザ・ナバリ (5.11d)
名張のザ・ナバリってことは瑞牆レイバック的なクオリティってことで、つまりアルバム名と同じアルバム曲であり、ボンジョビにおけるボンジョビ的なものだろうと言う発想に至る。葱さんも”花 5.10a”をやりたいというので、今の状況にうってつけのルートだった。
しかし取り付きまでの行き方に迷う。
東京まで帰ることを考えると時短で登った方がいいだろうと思い。まず”3時 5.11a”を登る。これが全ての過ちだった。
3便目 3時 5.11a
ほぼ垂壁のノーマルなクライミングなのにボルトもなく、カムを決める場所も見当たらない。
グラグラしたプロテクションのまま、サイドホールドで引き上げる。絶対落ちられない状況だったけどどうにかガバを捉えて、カムをセットしながら登れた。
その後フォローで登ってくる葱さんも2回ほどテンションがかかる。あそこで落ちてたらヤバかった。
ルートの途中にマイクロクラックが見えたので、#0.2か#0.3があればもう少し安心出来た。もっとしっかりプロテクション見ないとダメやな。
何はともあれ取り付きまで来れた。
まずは葱さんの“花 5.10a “ のトライ
余談だけど葱の花言葉は『笑顔』『ほほえみ』『愛嬌』『くじけない心』らしい。
くじけない心でオンサイトしてた。
そして4便目 ザ・ナバリ 5.11d
オブザベがちゃんと出来ない蒼天攀路パターン。出だしで勢いよくクラックに体をねじ込んでからはフィンガークラックの痛みに耐えながら必死に体を上げていく。大量にぶら下がったカムから目当てのサイズを見つけるのにも一苦労。
が、まさかまさかのオンサイト出来た。
トラッドで5.11dというグレードをオンサイト出来たのは初めてだった。
ゆっくりながらもしっかりとプロテクションを取りながら登り切った。取り付きまで降りてきたとき、「しっかりプロテクションも取れてたじゃん!」と言われて素で喜んだ。普段から危なっかしいと周りから言われてるからか。なんて悲しい30歳。
陽も沈んだ中、再び気合の渡渉をこなすと駐車場で何やら人が。
名張のエリアを管理してくださっている方にお会いした。最近新しくルールが出来上がっていて、それを教えてくれた。クライマー以外の人も来ているので、クライマーが今登っているかどうか、そして駐車している車がクライマーのものかどうか分かるようにしたいとのこと。
◆エリアの入り口手前に黄色い旗を立てる(Tシャツなどでも可)
◆ハタのふもとに渡渉道具を置く(ビーチサンダルなど)
◆車のサイドミラーにはタオルを巻いておく
FBコミュニティの「なばら〜(香落渓を登り続けたい有志の会)」は招待制だけど、決して閉鎖された集まりではないとのこと。自分から招待送ってもいいとのことでしたので、興味がある方はお声かけください。
さらにオススメ中華「トンコウ」を教えてもらう。油淋ナスが確かにうまい!普段の自分ではチョイスしないメニューだからありがたい。
そこからはひたすら梨泰院クラスを見ながら東京に帰還。
4日間のツアーが終わった。
ツアー全体の成果は
◆マルチピッチ
・福良の岩場
正面スラブ(5.9, 3ピッチ)
左岸壁(5.10a, 4ピッチ)
◆ボルダー
・シャイニングフィンガー 三段+
・ペルセウス 三段
・クワイエット 三段
・サマーヌード 二段 FL
・イルミ 二段 FL
・ダークホース 二段
・ニーマーマ 二段 FA
・Jの不時着(?) 二級? FA
・南淡の虎 初段
・TENIASHI21 優勝
◆トラッド
・ザ、ナバリ 5.11d OS
・3時 5.11a OS
・ゴールドフィンガー 5.10b FL
・直登 5.10a OS
◆映画、ドラマ、アニメ
・アバウト・タイム
・トゥルーマンショー
・梨泰院クラス
・いわかける!
・愛の不時着(2話まで)
クラックルートの11dオンサイトは、これからマルチやトラッドのルートに取り組む上で大きな自信になった。という、真面目に嬉しい成果でした。
テニアシに呼んでくださったabe 会長。良くしてくださったテニアシメンバーの方々、セッションした世界のケイタマン。そんで一緒にツアーしてくれた葱さんには感謝しかないです。
ありがとうございました。
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